2011年12月10日

EQの地味な重要さ

昨今のオールインワンシンセと呼ばれる楽器は膨大な音色ライブラリーが備えられており、演奏者はそのライブラリから好きな音色を選んでいろんな音を出すことができる。シンセの強みであり、大いに生かすべき特徴だと思う。

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でも多くの場合、プリセット(メーカーが用意してくれてる音色ライブラリ)の音色をそのままライブで使うとちょっと残念な結果になってしまうことがあると思う。

自分の場合、曲の音色セットを作るときは、求めている音色に近いキャラを持った音色をプリセットから探し出して、それを編集して自分仕様に変えて使ってる。たまにゼロから作る場合もあるけど、たいていの場合はプリセットライブラリに何らか使える音色はあるw。

プリセット音色のどこをどう編集するかはケースバイケースだけど、ほぼ必ずいじるのがイコライザーとリバーブだったりする。今回はEQについて書いてみることに。

イコライザー(EQ)

イコライザーはご存じ、周波数帯ごとに音量を強調したり抑えたりすることができるツール(ちょっと正確なな表現じゃないかもしれないけどこんな感じw)。高い周波数を強調するとシャリシャリした音になったり、低い周波数を強調するとおなかにゴンゴン響く重低音を出せたり。

シンセサイザーは大抵の場合、何らかの形でこのEQの調節ができるようになってる。エフェクターとしてEQが入ってることも多いし、簡易EQがエフェクターとは別に信号経路に挟まれてる事もある。

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EQの設定が何故大事だと思うか

シンセのプリセットに入っている音色ってのは、多くの場合、自宅のヘッドホンで聞いたり、単独で演奏したときに心地よい音になるようにプログラムされていると思う。メーカーとしても、ユーザーがちょっと音を出したときにカッコイイとかキレイと感じないと魅力を感じてもらえないかもしれないしねw、音色が単独でキレイに聞こえるように設定するのは自然な動きかと。

でも、単独でカッコイイ音でも、バンドアンサンブルの中ではワケが違う。ライブハウスのスピーカーで大音量になった時も考えると、プリセットの音色はそのままでは凄く冴えない音になりかねない。

MOTIF ESのプリセットのピアノ音色はたとえばこんな音

うーんキレイヽ(´ー`)ノ
厚みがあってナチュラルな感じで良いじゃんね。

でもこれ、実はバンドアンサンブルの中で演奏すると、目立たない上に凄く低音が気になってしまうようになり得るんだな(音声サンプルがないのが残念だけど体験済みw)。

バンドで演奏すると多くの場合、自分以外にギター、ベース、ドラムが居るわけで、みなさんそれぞれ音を出している。で、バンドの場合、ベースとかドラムのバスドラあたりが低音域担当なワケだ。だから鍵盤が更にこの音域で協力する必要はない。

上のピアノの音色では実は結構低域の周波数も出てるんだよね。で、バンドで演奏すると発されている周波数がベースなどと被ってアンサンブルとしての音がドンヨリした響きになってしまう。

さらにプリセットのままだとこのピアノ、バンドの中では高周波数域が足りてなくてイマイチきらびやかさに欠ける。せっかく演奏してても他のパートの音に埋もれて目立たないんだよね(^^;)。ピアノがバックで引っ込んでる役割の曲ならそれでいいかもしれないけど、ロックな曲でそれなりに主張が必要な場合はこのままではギターに殺されちゃうw。

そこで、自分の場合、結構やるのがローカットとミッド~ハイ強調
曲や音響環境によって度合いを調節する必要はあるけどね。さっきのピアノのサンプルを例に、イコライザーをかけた結果がこれ↓ビフォーアフターで。

4kHzのあたり中心にをブーストして、60Hzを中心にカットしてみました。
中高周波数域をブーストすることによってピアノのアタックが強調されてアグレッシブになり、低周波数をカットすることで音がサッパリして軽くなった。低周波数はベースに任せる、と。

ローカットしてるから単独で聴くと「ちょっと痩せ過ぎじゃね?」と思えるほど軽い音になったけど、実際にこれで演奏したらアンサンブルとしては結構良い感じに爽やかな雰囲気になったのでした。分かんないもんだよねw。

というわけで、アンサンブル内での鍵盤音色は、とりあえず低音域はある程度カットして作ります

ピアノを例に取った場合、ローカットすることによって、比較的遠慮なく低音域の鍵盤を使えるようになるというメリットもあるね。
ローカットしてない状態で低音域の鍵盤も使っちゃうとアンサンブルの音がモコモコになっちゃうからもはや低い音は弾けないけど、ローカットしてれば、ある程度弾いても平気だし、低音域においてもピアノを混ぜることができてその分表現力の幅が広がる、と。

ちなみに高音域を強調するかどうかは、楽曲と音色によるかな。たとえばピアノ音色は、音源にもよるけど4kHzあたりをブースとするとキンキンした雰囲気が強くなって他の楽器と混ざっても「ピアノっぽい」キャラが出やすい気がする。でもやはりこれも曲やバンドによるしね。ギタリストさんなど、同じ音域で演奏するパートとのバランスが必要なので、この辺はバンドや楽曲によって変わってくるかと。

なぜシンセ本体でEQ設定するのか

高周波数域をどういじるかは別としてとりあえずローはカットするなら、早い話がミキサー側のEQでまとめて鍵盤のチャンネルのローをカットしちゃえばいいんじゃね?って考えもあるけど、実は鍵盤だけしか演奏してない場面があると、結構全周波数域出した方がサマになる(と思う)w。なので、そういう場面で使う音色では自分の場合あまりローカットしません。さっきのピアノも単体だと痩せて迫力ないもんね(^^;)。音色自体に問題がなければハイの強調もあまりせず、こういう時ばかりは結構プリセットのEQ設定そのままだったりします。あと、アンサンブル演奏でも、ベースがソロを取っててやたらと高い音も弾くような場面があったら同じく、肉付けである程度低音域出してあげてもいいのかも?

最終的には、音色のオイシイ成分をアンサンブルの中でも発揮できて、なおかつ他のパートと綺麗に混ざるように設定するのが目指すところだと思うのです。だからリハでの微調整は重要だね。


そんなこんなで最終的なEQ調整はPAさんの仕事とは言え、鍵盤のアウトプット自体はある程度自分で制御するようにしてたりします。実際これをやるだけでバンド全体で演奏したときの音のバランスが良くなったりするから何気にバカにならないと思う。ちなみにプログレとかやってると一曲の中でも色んな場面に出くわすから、それぞれ見合った設定を作らないとならなくて大変w。


…と、ここまで書いたものの、内容はあくまでも自己流で研究した結果なので、実際これが正しいやり方なのかは分からなかったりしますww。でも、自分のライブの音源を聴いても結構良い結果が得られてたりするし、リハの音バランスも鍵盤音色のEQ制御で大分まとまり感が変わったりするので、そう間違ったことはしてないんじゃないかと推測してますw。

世の中の一流キーボーディストさんたちの音色設定、こういう細かいEQ設定を考慮に入れてるのか、または実はそうでもなかったりするのか、気になるところだね。

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